昭和モダン 荻窪郵便局電話事務室

昭和7年、荻窪駅に近い一角(現荻窪4丁目31番地)に時代の先端を行く白亜のスマートなビルが誕生しました。「荻窪郵便局電話事務室」です。コンクリート造りの二階建て、曲面のファーサード(正面)をもつ典型的なモダニズム建築でした。

「NTT東日本荻窪ビル」として現存する建物は、四つ角に面したファーサードが残念ながら外装パネルに覆われてしまいましたが、特徴的な窓がかつての姿を偲ばせます。

設計は、日本中の郵便局や電話局の設計を担当した逓信省技師山田守。放射線を描くアーチが特徴的なお茶の水の「聖橋」も、山田が内務省復興局橋梁課に席を置いていたときの仕事で、昭和2年の施工です。

戦前、電話交換手はタイピストとならぶ代表的な女性の職業でした。昭和4年1が鵜25日発行の「杉並町報」の「見分雑記」欄に、こんな記事がのっています。

「荻窪電話局ではあの狭隘な交換室で九百何十本の電話を引き受け、外のめで見るも気の毒な程大多忙の中に五百番嬢の親切さは筆舌に尽くし難きものがある。色々めんどうな事を聞いても、すぐに調べて気持ち良く、わざわざしらせてくれるその有難さ!是非お姓名を聞かせて戴きたい云う意味の投書が本社に続々と飛び込む事、飛び込む事」

モダンで明るい郵便局ができて、いちばん喜んだのは、「狭隘な交換室」で働いていた五百番嬢をはじめとする電話交換の女性たちだったにちがいありません。

文化厚生部 松井和男