
未来の記憶地図(南口商店街)
郷土博物館分館で、3 月 19 日まで開催している「荻窪の記憶Ⅴ」展には、荻窪駅南口の駅前にあるお茶屋さん繁田園の店長•兼田護さん(87)が描いた南口商店街の記憶地図が展示されています。
地図には、昭和 30 年頃から東京オリンピックが開催された昭和 39 年頃までの間に、南口の商店街にあった店が思い出す限り書き込まれています。しかし、60 年後のいま、同じ場所に残っている店は、仲通りのクロダ薬局やバス通りのうなぎの東屋と小関時計眼鏡店など、ほんのわずかです。一目で気づく、今の南口商店街との違いをあげれば、当時の商店街にはチェーン店がまったく見あたらないことでしょう。
では、もし、現在の商店街の地図を 60 年後の人々が見たら、どう思うのでしょうか、そんな疑問が頭に浮かんだのは、税務署の帰りに JR 沿いの通りを歩いていたときのことでした。通りには、わずかな距離の間に二軒の歯科、皮膚•泌尿器科、それに内科のクリニック、「痩身専門」の教室、「足と歩行の診療所」、さらにその隣には、「頭の休息 個室 ヘッドスパ専門店」が看板を出していたからです。もし、こんな通りの地図を 60 年後の人々が見たら、「この町の住民は、心身ともにかなりストレスの多い生活を送っていたようだ」と思われても仕方なさそうです。視点を変えて、遠い過去や未来からの目で見ると、見慣れた町も普段とは違って見えるかもしれません。
文化厚生部 松井和男