ウグイス
今年は例年になく、ウグイスの声がよく聞こえたと思いませんか。この稿を書いている5月の連休明け、だいぶ間遠くなったとはいえ、まだウグイスの声が聞こえています。「ホーホケキョ」、あまりにはっきり聞こえるので、さんぽの途中、思わずあたりを見まわしたことが何度もありました。公園や緑地で、声の主を探す親子の姿もよく見かけました。
元気のよい声で、自粛中の私たちを慰めてくれたウグイスですが、めったにその姿を見せてはくれません。大きさはスズメほど、羽根は緑と茶の混ざった地味な色で、用心深く、ヤブの中などに隠れることが多いといいます。しかも、実に落ち着きがない。これは、松尾芭蕉の句です。
うぐいすは柳のうしろ藪の前
あっ、柳のうしろ、今度は藪の前と、芭蕉も忙しくその姿を探しています。
ところで、声がするのに姿をめっきり見ることが出来ない鳥に、カッコウがいます。だいぶ前のことになりますが、私は一度だけ、荻窪でその声を聴いたことがあります。荻窪でカッコウとは信じてもらえないかもしれませんが、戦前にしゅっぱんされた「武蔵野の記録」にはこう書かれています。「カッコウ 何といっても吉祥寺辺の名鳥だ。五月、六月の頃に朝早く、クワッコウ、クワッコウと啼く声は実に気分が良い」。著者の織田一磨は吉祥寺に住んでいた画家で、「人家が増せば森林も伐り開かれて、野鳥の影も見られなくなる。初夏の吉祥寺はヴエトーフェンの第六にある小川の辺りのやうな感じだったが、これもそろそろ名残が近くなった」とも書いています。
荻窪で野鳥の声を聴くことができるのも、緑のお陰。この環境を守っていきたいものです。
文化厚生部 松井和男